ちびくろ日記

小さくて色黒、平凡な大学生の日常。

卒業の寂しさから、卒業しよう

3月1日。

 

なんとなくツイッターを眺めていると、卒業式の感動的な動画がたくさん流れていた。

 

卒業証書を受けとる様子。やんちゃな見た目の割に、お辞儀がきれいだなぁ。

 

座ってお偉いさんの話を聞く様子。あ、あくびしている子がいる。

 

肩を組んで楽しそうに歌う様子。ああ、ぼくも混ざりたい。

 

泣きながら友人と抱き合っている様子。ああ、ぼくも混ざりたい(?)

 

 

そうか、

あの日から、もう二年が経ったのか。そうか。

 

長いようで、短い。

濃いようで、薄い。

 

春の、優しくくすぐるような健やかな光に包まれながら、あの、不思議な三年間に思いをはせた。

 

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~高校1年生~

 

入学式の直前、体育館に併設された武道場

中学の時から使っているのにも関わらず、一回り大きな学ランを着ながら

緊張した面持ちでクラスの目印の前に座っていた。

 

高校は、中学とはわけが違う。

 

中学の時は、通う学校がある程度区域内で振り分けられていたため、小学校の友人がそれなりにいた。

しかし、高校になると、いろんな区域の人たちがごちゃ混ぜになるので、必然的に知らない人の割合が跳ね上がる。

 

 

ぼくは、今でこそ克服しかけているが、以前まで極度の人見知りであった。

案の定、だれにも話しかけることができず、ただただ黙っていた。

 

 

クラスの列の前方に視線を移す。数名の男子が既に話をしている様子が目に入る。

 

 

「え、もう仲良くなってるんだ。どうしよう、仲間外れにされないかなぁ」

 

 

何もできない自分に対して、焦る気持ちが追い打ちをかけてくる。

 

そんな自分に嫌悪感を抱きながら、ぼくは高校の入学式を迎えた。

 

 

 

今考えてみると、入学して一週間のぼくの行動は、ものすごくぎこちなかったと思う。

 

前の人(当時はものすごく他人に感じた)からプリントを受け取る時に会釈をしたり、

 

全くおもしろくないのに愛想笑いをしたり、

 

不意に目が合わないように下を向いて歩いたり。

 

おそらく、ぼく史上トップ3に入るぐらいのキモさだったと思う。

記憶から葬り去りたい。切実に。

 

 

 

そんなぼくに、チャンスがやってきた。

一泊二日の課外実習である。

 

その内容には、勉強会やレクリエーション等、みんなと仲良くなれる機会が

ふんだんに詰め込まれていた。

 

チャンス、チャンス。ぼくには、できる。

 

漢、ちびくろ。

 

やるしかない。

 

ぼくは、ゆっくり息を吐き、ふんどしをしめた。

 

 

二日間、ぼくはガムシャラにはしゃいだ。

謎の一発ギャグも連発した。

何をやったのかは全く覚えていないが、みんなの顔に浮かんだ困惑の表情は、今でも鮮明に覚えている。

 

 

正直めちゃくちゃ恥ずかしかったのだが、その甲斐もあり

クラスのみんなと打ち解けることができた。

 

漢には、やらなければならない瞬間が必ず訪れる。

15歳のぼくは、そう悟ったのであった。

 

 

 

 

だが、その喜びも束の間。さらなる試練が訪れた。

 

ぼくが入ろうとしていた野球部に存在する、「教育期間」である。

 

教育期間では、二つ上の先輩方が引退するまでの間、

新しく入ってきた一年生の規律を正すための「教育」が行われるのである。

 

教育と聞くと響きはいいが、実際にはめちゃくちゃに厳しい期間である。

絶対にもどりたくない。

 

この教育期間については、面白い話がたくさんあるので

詳細はまた別の記事に書くとしよう。乞うご期待。

 

 

そして、凶暴な先輩たちの圧力に耐え、なんとか教育期間を乗り切ったぼくは

この世を自分の手にしたかのような奇妙な自信を手に入れることができた。

 

 

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そのオーラを身にまとい、一年間を楽しく過ごすことができた(雑)

 

 

 

 

 

~高校2年生~

 

2年生にもなると、学校生活にも余裕が出てきた。

同じ学年の生徒の顔はある程度覚えてきたし、学校のノリもつかめてきた。

 

人見知りと目立ちたがり屋という相合われない住人が同居している

変人のぼくは、なぜかみんなの前に出る機会が少しずつ増えてきた。

 

 

学年代表であいさつをしたり、全校生徒の前で漫才をやったり。

舞台に立って人を笑わすことは、言葉に表すことができないぐらい楽しかった。

顧問の先生に、野球に集中しろとバチクソに怒られたのを除いては。

主将だったのに。

 

そして、ぼくは調子に乗った。

これでもか、というぐらい調子に乗った。

うつぶせで寝ることができないぐらい鼻高々になっていた。

 

 

しかし、そのことが原因で、ぼくは一気に追い込まれることになった。

 

 

 

 

ぼくらの高校には、年に一度、体育祭と文化祭が交互に行われる。

 

行事はめちゃくちゃ盛り上がる。

だが、実はそのあとに一番楽しみにされている行事がある。

 

学生の、学生による、学生のための行事。そう、後夜祭だ。

 

後夜祭では、ダンスやバンド、お笑い等、みんなを楽しませるために

精一杯のパフォーマンスが行われる。

 

会場では、熱気がぶつかり合い、蒸し風呂のような状態になる。

みんな、弾けるような笑顔で楽しんでいる。

 

 

そんな中、ぼくだけは違った。

 

舞台裏で、べちゃべちゃに緊張していた。

 

というのも、ぼくは調子に乗ったせいで、ギャガー1位」

というものに投票で選ばれてしまった。

 

簡単に説明すると、"ギャガー=ギャグやる人” である。

 

 

 

なんじゃそりゃ!!!!

 

 

 

面白い人1位とかいうランキングとかでもなく、

ギャグやる人て!!!!

 

 

しかもギャグそんなにやってもないし(苦手だし)

、他に面白い人はいくらでもいたはずだろ!!おい!!

 

 

と怒りが爆発しそうになったが、もう一人の自分がゆっくりとこう語りかけた。

 

 

 

これはみんなの投票により決まったことだ。

日本は民主主義の国と言われているが、現実は違う。

数は暴力だ、お前ひとりが抗っても、川辺にある小石にすぎない。

 

 

 

その言葉で、ぼくは我に返った。

 

そうか、抵抗しても無駄なのか。

この大きな十字架を背負ったまま、生きていかなくてはならないのか。

冷たくほほえみながら、そうつぶやいた。

 

半ば洗脳にかかったような状態で、ぼくは舞台に上がった。

 

目の前に広がる、圧倒的な数、数、数。

みなが僕をあざ笑っている。これが、現実か。これが、人間か。

 

 

ぼくは、何者かに操られたかのように、滑稽な動きを数秒間繰り返しながら、

目の前にいる悪魔共にむかって奇声をあげた。

 

場内に響き渡る声と振動が止み、会場が静まりかえった。

 

 

 

 

その瞬間、ぼくの目の前は真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~高校3年生~

 

 

気が付くと、3年生になっていた。

時が過ぎるのは早いもので、もう最終学年。

 

そして、目前と迫る、甲子園をかけた最後の大会。

自分でいうのもなんだが、ぼくは野球に対してものすごく熱心だった。

 

小学校から野球をはじめて以来、生活の中心は野球だった。

野球をするために目覚め、野球をするために食べ、野球をするために寝る。

 

野球以外のことにはあまり興味がなく、

どうしたら野球がうまくなるのか、常に考えていた。

 

 

しかし、そんな野球小僧のぼくは、深刻な悩みを抱えていた。

 

「ケガ」である。

 

 

ぼくは、めちゃめちゃケガをしやすかった。

肩、肘、手首、腰、膝、すね、肉離れ、捻挫、など数を挙げればきりがない。

 

どこかが治ったらどこかを痛め、それが治ったらまた違う部位を痛め、

みたいな。

まるでローテーションを組んで回しているかのようだった。

 

 

野球大好きバカのぼくにとって、それは地獄のような苦しみだった。

 

なんでみんなは思いっきりプレーできているのに、ぼくはできないのか。

なんでぼくだけがこんな仕打ちを受けないといけないのか。

怠けている奴と、体を交換したい。

 

ひねくれていると感じると思うが、それだけ悔しかった。

 

 

さらに、ぼくはチームの主将を務めていた。

 

ぼくの理想の主将像は、同じグラウンドに立ってプレーで引っ張っていく

というものだった。

 

しかし、ケガが多かったため、グラウンドに立つことができる時間は

少なかった。

 

チームをまとめるのはただでさえ大変なのに…

 

ぼくは、途方に暮れていた。本気で死を考えたこともあった。

 

そんなぼくを救ってくれたのは、親やチームメイトだった。

 

いろいろ思うところはあったと思うが、ぼくを見限ることなく、

励ましの言葉をかけてくれた。

 

 

その応援のおかげで、ぼくは最後の大会になんとか間に合わせることができた。

 

 

 

 

 

だが結果は、一回戦敗退。

 

 

 

すごく悔しかった。泣いた。

チームメイトや応援に来てくれた仲間の顔を見ると、さらに悔しさがこみあげてきた。

 

しかし、胸の内には、かすかな充実感があった。

ケガを克服し、自分ができることはやりきったという充実感が。

 

 

不思議な感情とともに、ぼくの9年間の野球人生は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受験時の記憶はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浪人が決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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卒業式

 

この3年間、思えばいろいろなことがあった。

 

長いようで、短い。

濃いようで、薄い。

 

 

何とも説明がつかない、不思議な3年間。

 

 

高校生という多感な時期に得た経験は、必ずや今後の人生に

影響を及ぼすだろう。

 

 

 

二年前に卒業したぼくでも、高校に戻りたいと思うときもある。

 

 

 

だが、いくら泣き叫んでも決して過去には戻ることはできない。

 

 

それでも過去に執着しているということは、「いま」が充実していないということの

裏返しだ。

 

 

 

過去には戻れない、いま、これからを楽しもう。

 

 

 

卒業は確かに寂しい。

寂しいと思うのは、その時が充実していた証拠。

 

 

その充実していた時期が、いまや未来の充実を奪ってしまうのは、

なんとも皮肉なことじゃないか?

 

 

さあ、前を向こう。いまを懸命に生きて、

 

卒業の寂しさから、卒業しよう。

 

 

 

 

 

未来を笑ってむかえられるように。

 

 

 

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