ちびくろ日記

小さくて色黒、平凡な大学生の日常。

Amazon's choice

とある用事のついでに、新宿駅周辺を散歩した。今日のご時世に加え雨のせいか、休日の昼間にもかかわらず、人はちらほらすれ違う程度であった。

新宿西口から中央通り方面を歩いていると、突如強力なビル風に煽られた。ビニール傘はあっという間にひっくり返り、かぶっていた黒の帽子は一瞬にして吹き飛ばされた。

その瞬間をとらえた映像があるのなら、ぜひとも見てみたい。腹ごしらえを済ませうたた寝をしている最中に、貝殻を奪われたヤドカリさながらの慌てようだっただろう。

そうして、ぼくは愛用していたAmazon's choiceの2千円弱の帽子を紛失した。あまりにも風が強く、帽子がどこへ飛んでしまったのか確認できず、まるでマジックのように消されてしまった。

しばらくの間、すぐ隣にあった縁側の茂みを探したが、見つからず。諦めて帰ろうと、その道から垂直に伸びる交差点を横断しているその時だった。50m先、車道に浮かび上がる、机におしつけられた鼻くそのようなシルエットを発見した。ぼくは、それがmy帽子であると直感した。小走りで引き返し、車の通らないタイミングを見計らって、奇跡的に帽子を取り返すことができた。

すぐにでもかぶってやりたかったが、道路に溜まっていた水たまりに落ちていたので、「汚いな」と思い、家までつまんで帰った。

 

帰路の途中、この一連の騒動(と呼ぶにはあまりにも小規模だが)を振り返っていると、不思議と「楽しかった」という感情が湧いてきた。それはなぜか。

おそらく、「自由」を感じたからではないかと思う。ぼくは、常日頃から周りの目を異常に気にしてしまう、なんともしょうもない男である。その性格から、何かとしんどくなってしまうことが多い。

しかし、帽子を探している時間は、完全にとは言えないが、ほとんど人の目を気にしていなかったように思う。その時その瞬間だけ、何かから解放されていたのかもしれない。それが、おそらく「自由」なのだろう。

このことは、誰も見ていないところで盛大に尻もちをついたり、家でひとり料理をしている時に卵1パックをまるまる割ってしまったりした時に、一瞬の後悔のあとに楽しさやおかしさがこみあげてくるのと、何か関係があるように思える。

 

とは言ったものの、帽子が見つけられたからよかっただけでそのまま無くしてたら普通にブチギレてたと思います。

 

おわり。